三十八候
寒蝉鳴
ひぐらしなく
ひぐらし、何故『寒』という漢字を使うんでしょうね。
蝉は羽化してから命が尽きるまで殺生しない清らかな生き物なのだそうです。
なので、お寺の装飾に使われていたりするんですよ。
昔、我が家に愛猫娘がいた夏。
ベランダで洗濯物を取り込んでいて、愛猫娘は足元でコロンコロンとベランダの床を楽しんでいた。
その時、蝉がジジジジと鳴いた。
気が付かなかったけれど、先客がいたらしい。
びっくりした私。
戦闘モードの愛猫娘。
逃げるタイミングを逸した蝉。
最初に動いたのは愛猫娘。
パクっ!
声無く悲鳴を上げる私。
だって、蝉を口に咥えるなんて!!
驚いたのは蝉でしょう。
一瞬、間をおいてジージージーとさっきより大きく鳴き、激しく体を震わせた。
口の中で突然暴れだした蝉に驚いた愛猫娘は、口を開け、その隙に蝉は逃げていった。
その後、その蝉はちゃんと子孫を残せたのかしら。
短い一生を無事に終えることが出来たのかしら。
蝉さんの思い出が『猫の噛まれたこと』だけだったら、可哀想だなと思う。
私は、夏が来るたびに、セミの鳴く声を聞くたびに、戦闘モードの愛猫娘、びっくりした可愛い表情、何ごとも無かったかのようにグルーミングを始めたことを思い出す。
夏のあの日、確かにあの子と過ごしたことを思い出す。
(いや、忘れたことは無いけどね)