仕事場に嫌いな人がいる。
私は裏表のある性格なので、自分がその人を嫌いだなんて誰も解らないようにふるまっている。(付き合いが長いので気が付いているかもしれないけど笑)
その人はとても仕切りたがり屋だ。
仕切りたがり屋なのに、それを認めない。
曰く、誰もやらないから私がやるしかないじゃない!んだそうだ。
おいおい、誰もって、私の事かい?
お仕事の性格上、やり方はいろいろあって、ゴールさえ間違えなければ、人それぞれのやり方で問題ない。
なのに、その人は自分のやり方じゃないと嫌なタイプ。
他の人の違うやり方を認めないタイプなのだ。
で、勝手にしゃしゃり出て、勝手に忙しがって、自分だけが頑張っている!みたいな顔をする。
ちょっと複雑な仕事があって、おばちゃん連中はどうにも覚えられない。
社員さんもその件に関してはおばちゃんたちに丸投げする気は無い。
それがその人には気に入らないらしい。
曰く、私たちがわかるようなシステムに作り変えろ。と。
そもそも、それは社員さんが自分たちでやるからって言っているんだから、いいじゃないの。
それでも、その仕事に関わりたいなら、その複雑なシステムを覚えやがれ!と思うわけですよ。
その人は配偶者とも折り合いが悪い。
その愚痴をえんえんと延々と永遠と聞かされる。
私は愚痴と相談の区別がつかないタイプなので、その都度、私なりのアドバイスをする。
すると、『そうじゃないの、ちがうの、でもね。』と始まる。
聞かされていた当初はイライラしたものです。
でも、共感が欲しいだけで、別に問題を解決してほしいわけじゃないのね。
そりゃ人様のトラブルを解決できるとは思っていないけど、真摯に答えてた私が莫迦みたい。
それに気が付いてからはその人のぐち愚痴は一切聞いていないふりをすることにしている(よかった、共感力の優れた同僚がたくさんいて笑)
本当にうるせーなーと、いつも思う(笑)
それでも、時折見せる繊細さや素朴さにハッと思う時がある。
その人の魂は本当はとても清らかなのではないかと。
先日、とあるイベントで梨木香歩さんの『冬虫夏草』をいただく機会があった。
調べたら、その前に『家守綺譚』というお話があるというので、購入した。
最初の一話目でポロポロと涙が出て、自分にびっくり。
そして、もっと驚いたのが
『私の嫌いなあの人は本来なら征四郎さんのような生活をすべき人なんじゃ無いか』と、確信していたこと。
どんな理屈よ?って思われるかもしれないけれど、理屈じゃないの。
優しい隣人と美しい自然と不思議と友とやるべき仕事さえあれば、あの人は本来の魂のままで生きていけたであろうに。
この物語の時代は明治。
日清日露戦争の間の頃。(と、思われる)
軍国主義的な名前を持つ割に牧歌的な性格の『私』綿貫征四郎の繊細で素朴で清らかな生活。
不思議を不思議なまま受け入れる、生き方。
どの物語を読んでも、とても幸せになれる。
大好きな、大好きな本。
ああ、そうか。
私はあの人のことが嫌いだけれど、それと同じくらい幸せになってほしいんだな。
だからといって、愚痴なんか聞いてあげないけど(笑)