風日晴和

毎日楽しく忙しく

ある漫画家さんのこと。

前クールでお気に入りだったドラマがありました。

その中で大好きな映画「マダムインニューヨーク」が登場して、なかでも一番好きなセリフが取り上げられていました。

「尊重してほしいだけ」

 

最終話のタイトルロールで脚本が原作者のお名前になっていたのを見て、「ああ、いい試みだな」って思った。

長く、しかも終わっていない漫画を何話かにぎゅっとまとめるのは大変な作業だし、それはプロの脚本家にお任せして、最終話を原作者の中にある漫画の最終回と違和感のないようにする作業としての分業。

同じように「きのう何食べた?」も長く、しかも終わっていない漫画でそのドラマ化映画化の際、漫画の順番に描かれている訳ではなくいろんなエピソードを違和感なくとても上手に繋げていたから、このドラマもそんな感じなのかなと。

 

なのに、実際は原作者が書かなければいけない状況にあったからだったなんて・・・・。

 

自分の作品のドラマ化を了承した時点で「ドラマ」と「漫画」を切り離せなかったか。

とんでも設定の定番ラブコメは本意ではないかもしれないけれど、「ドラマ」は「ドラマ」。原作漫画という素材を使ってのテレビ局が作った全く違う新しい作品。

敬愛する作家、筒井康隆先生は何度も映像化される「時をかける少女」を「稼いでくれる孝行娘」とか「銭を稼ぐ少女」と言っていたと文庫本の解説に書いてあった。

それくらいの切り離しっぷりは、豪胆すぎるかもしれないけれど。

完結している作品と連載途中の作品と同じに扱ってはいけないのは承知の上だし、そこまでやんちゃな考えを押し付けたい訳じゃないし、大事な作品を守り切れなかった苦しみは計り知れないけれど。

 

でも。

でも、やっぱり、漫画家さんにはもっと読者を信じてほしかった。

あの漫画を愛する人は、ちゃんとわかってくれてたと思う。

ドラマとは別物だと。

ドラマから漫画を読み始めた人だって、ちゃんと漫画家さんの伝えたいことを感じ取ってくれたと思う。

ちゃんと最終回まで描き上げてほしかった。

描き上げて、ドラマを圧倒してほしかった。

それがどれほど残酷な願いであっても。

 

生きなきゃダメだったんだよ。

最後まで描き上げなきゃいけなかったんだよ。

 

それがどれほど、残酷な願いであっても。

 

 

ただ、あなたは「尊重してほしいだけ」だったんでしょう。

たった一つの、一番大事な願いが叶わなかった。

なんて残酷で悲しい出来事。